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バリアフリー教育開発研究センター

バリアフリー教育開発研究センターについて

本センターは,『バリアフリーシステムのあり方について学問的な体系化を図るとともに,バリアフリーに深い理解を持つ人材を育成する』という東京大学の基本目標に即して2009 年に組織化されました。教育をバリアフリーの観点から見直すとともに,バリアフリーを教育研究の領域において推進するという二つの理念に基づき研究・教育活動を行っています。2021 年からは東京大学の「未来社会協創事業(FSI事業)」のなかで「インクルーシブな知性の育成とダイバーシティ育成実現のための教育・学習環境改革事業」を担い,研究・教育活動を一層発展させています。

センターHP:
https://www.p.u-tokyo.ac.jp/cbfe/index.html

センターの目的

本センターは二つの目的を定めています。第一に,バリアフリーは福祉・医療・建築・社会保障制度等の課題であるに限らず,学校の児童・生徒・学生や教師,教育行政に携わる者をはじめ,「一般社会人が本来,学習して身につけておくべき基礎的知識であり市民的教養である」という教育に関する新しい認識を提示するための研究を行います。 第二に,障がいのある児童・生徒・学生への就学・学習支援という教育活動に留まらず,一歩進めて,バリアフリーの理念と思想について深い理解を持ち,バリアフリー活動に積極的に取り組み,かつ,グローバルな視野を備えた人材の育成を図るための教育カリキュラムを開発します。

 あわせて,東京大学がバリアフリーキャンパスとして教育研究支援の拠点となることを目指し,2022年からは多様なジェンダー/ セクシュアリティ,障害,生きづらさに関して当事者性を持つ学生・院生・教職員相互の学び合いや協働を通じ,新たな教養教育を可能とするプラットフォームであるKYOSS(教育学部セイファー・スペース)を開設・運営しています。

 そうした営みを持続しつつ,学校や,一般社会における知識・経験の不足,誤解や偏見を解消し,あらゆる人々が平等な社会参加への機会と場を与えられ,「学校・社会は多様な人間により構成されるのが本来あるべき姿である」という知性と感性を磨く人間教育を目指しています。

センターの活動

≪実績≫

2022年
  • 公開シンポジウム「虐待と向き合う児童相談所の新たな役割と可能性―地域における安心の子育て支援の基盤整備に向けて―」
  • インクルーシブ教育定例研究会(全10 回),ダイバーシティ教育定例研究会(第3 回)
2021年
  • 公開シンポジウム「コロナ禍における『子どもと若者』の心の健康と支援―オンライン認知行動療法の活用と可能性―」
  • 公開シンポジウム「オンラインによる発達支援の最前線―発達障害傾向のある子どもと親を支援する―」
  • インクルーシブ教育定例研究会(全6 回),ダイバーシティ教育定例研究会(全5 回)
2020年
  • 公開シンポジウム『「新しい日常」とインクルージョンの課題1―「ソーシャル・ディスタンス」という壁―』
  • インクルーシブ教育定例研究会(全4 回),ダイバーシティ教育定例研究会(全3 回)
2019年
  • 【10周年記念公開シンポジウム】「インクルーシブ教育の新段階~養護学校義務化施行40年を振り返りつつ~」
  • バリアフリー教育開発研究センター ダイバーシティ教育定例研究会<第3回>(2018年度最終回)
2018年
  • 公開シンポジウム『映画「みんなの学校」上映:フル・インクルーシブ教育を実現するための学校づくり・授業づくり―自分の学校で「みんなの学校」をつくるために―』
  • 公開シンポジウム『ポスト2020 を見すえた共生社会実現に向けた教育の役割―バリアフリー・インクルーシブ教育の未来2020―』
  • 公開シンポジウム『学校はいかにして「排除的」になるのか?』―学校の中の多様性とバリア―』
  • インクルーシブ教育定例研究会(全5 回),ダイバーシティ教育定例研究会(全2回)
2017年
  • 公開シンポジウム『共生社会を拓くパラリンピック教育』
  • 公開シンポジウム『家族・支援者に役立つ「発達障害」理解の最前線シンポジウム―利用しやすい最新支援サービスの提供に向けて―』
  • 協定調印式記念講演 『「みんながつくるみんなの学校」大空小学校のめざしてきたこと―すべての子どもの学習権を保障し,ともに学ぶために』(大阪市立大空小学校校長 市場達朗)
2016年
  • 公開シンポジウム『「合理的配慮」を活かすコミュニケーションとは――組織の多様性が生み出す価値について考える』
  • 公開シンポジウム『「共生社会を拓くパラリンピック教育」』
  • センター主催公開研究会『「性の多様性」授業における「学び」とは?――クィア・ペダゴジーの意義と課題』
2015年
  • 公開シンポジウム『発達障害と合理的配慮 ―高等教育における「イコールアクセス」を考える―』
2014年
  • 公開シンポジウム『最新テクノロジーとバリアフリー ―発展に向けての可能性と留意点―』
  • 公開シンポジウム『発達障害を抱えた若者の就学・就労を支援する ―バリアフリーの観点から何ができるか―』
  • 公開シンポジウム『教科書とバリアフリー ―インクルーシブな社会のための教育の課題―』
2013年
  • 公開シンポジウム『ICTが拓く心の健康イノベーション』
  • 公開国際シンポジウム「日米共同開発『考え込み防止』
  • 認知行動療法による折れない心を育てるWeb研修サービス」
2012年
  • 公開シンポジウム『社会で取り組むうつ病の予防と回復』
2011年
  • 国際シンポジウム『人と人との間のバリアフリー』
2009年
  • 市民公開フォーラム『教育のバリアフリー、そしてバリアフリーの教育』

他研究会,ワークショップ主催共催多数


  • 公開シンポジウム(2018 年3 月)

  • インクルーシブ教育定例研究会・特別回(2018 年11 月)
  • 教育・研究交流連携事業に関する協定調印式と記念講演(2017 年9 月)

教育

2011 年4 月から東京大学における学部横断型教育プログラムの一環として,『バリアフリー教育プログラム』を提供してきました。2023 年からは『ディスアビリティ・インクルージョン教育プログラム』へと改称し,プログラム内容を充実させることを予定しています。

バリアフリー教育プログラム
https://www.p.u-tokyo.ac.jp/cbfe/cdp/index.html

  • バリアフリー教育プログラムの授業風景

組織について

東東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センターとして,2009 年4 月1 日に発足され,2010 年4 月1 日に,附属施設として全学的構想図の中に正式に位置づけられました。センター長,副センター長,専任教員 1 名,附属中等教育学校長,および研究科内教員若干名(兼任)で構成され,センター長を委員長として運営委員会を設け,センターの運営にあたっています(2022 年現在)。
本学教員(附属中等教育学校を含む)の内から研究員(若干名)を,また国内外の他大学・研究機関と研究関係機構(教育委員会,国公立私立諸学校,教育・福祉・スポーツ等に関する機関等)の教職員あるいは,それと同等の資格を有すると認められた者の内から協力研究員(若干名)を選任しています。また学生・大学院学生らも含め,日常的連携・協力を積極的に図っています。
2021 年には,大阪府吹田市と「教育・研究交流連携事業に関する協定」を結ぶなど外部との交流連携を強化しています。また,ジェンダーやセクシャリティ研究といった幅広い領域にかかわるスタッフを迎え,バリアフリーならびにインクルーシブな社会を実現するための教育研究の開発に積極的に取り組んでいく体制を整備しています。

・場所は赤門総合研究棟324 号室です。

スタッフ紹介

星加 良司(ほしか りょうじ)センター長(教授)(社会学・障害学)

星加 良司(ほしか りょうじ)センター長(教授)(社会学・障害学)

私は2009 年10 月より,同年4 月に教育学研究科に新設された「バリアフリー教育開発研究センター」に着任しました。専門は社会学で,社会現象としての「障害」を分析するための理論モデルに関わる研究,アファーマティヴ・アクションの社会的効果や規範的妥当性に関する研究,障害研究における「当事者性」の意味と可能性に関する研究等を行っています。
 障害を社会現象として把握すると,実は障害者の経験する不利益や困難の多くが,特定の状態を規範(norm)からの逸脱と見なし「異常(abnormal)」なものとして規定する社会的な名付けの過程を通じて,また特定の人々のライフチャンスを制約し不利益を増幅させる社会構造を通じて生じるものであることが見えてきます。
 こうした様々な社会的要因を研究の俎上に乗せることによって,障害者を含む様々な社会的マイノリティにとって生きやすい社会を構想するための豊富な選択肢について検討することが可能になります。
 従来の「バリアフリー」の研究と実践は,やや偏った前提の上に成り立っているという側面があり,多くは,あらゆる人々が既存の社会的な価値や規範にアクセスできるようにするための手段を見出そうとするもので,バリアフリーの研究/実践がかえってバリアを増大させるといった意図せざる結果も生まれてきています。そうした価値や規範のあり方自体を問い直そうとしていくことが重要です。この領域の「常識」をあえて疑いつつ,多角的な視点からの「バリアフリー」の教育研究を進めていければと考えています。

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