教育学部概要
教育学部とは
現在、社会は想像を絶するといってよいほどのスピードで変化しつつあります。人によってはこの変化は明治維新以来の変革だという人もいます。その中で教育 をめぐる議論も大きく変わりつつあります。現代社会が大きな問題をいくつもかかえているように、教育をめぐっても実に様々な深刻な問題が取り沙汰されてい ます。現代社会の大きな問題の多くが実はその根底において教育とつながっています。深刻な経済状況の中で、多くの経済学者やビジネスの専門家達が活発に発 言し、問題点を明らかにし、解決のための提言をしているように、教育にかかわる部分についても専門家の提言が求められています。
東京大学の教育学研究科・教育学部はそのような社会的要求に答えるべく早くから専門家の養成に力をそそいできました。そして、それは基本的には成功してき たと言うことができると思います。現在、本研究科・学部を巣立っていった多くの人々がさまざまな場所や状況の中で積極的に活動を行っています。無論、それ は日本人に限られるわけではありません。多くの留学生達が学んだ知識や身につけた技術を故国へ持ち帰ってそれをいかすべく頑張っていますし、現在も様々な 国々よりやってきた人々が真剣に勉学に取り組んでいます。あらゆる国において、またとくに発展途上国において、教育は国家の命運を担います。その意味にお いて、養成された専門家の質が問われることとなります。明治維新期の我が国が、財政的に無謀といえるほど教育専門家の養成のために投資したのも、ここに理 由があります。このことは過激な変革期である現在も十分に認識しておく必要があります。しかし、残念ながらそれにもかかわらず、本研究科・学部は本学の他 の研究科・学部やいわゆる教員養成系の大学と比べてその規模が非常に限られているという事実があります。極めて限られた人員と施設の中で有能な専門家達を 育ててきましたが、さらに多くの優秀な専門家達が必要とされています。しかもその必要度はますます増大しつつあり、かつ緊急なものとなってきています。教 育にかかわる関係領域は非常に拡大し、また人材に対する要求も複雑化・高度化し、その変化も激しくなってきています。そのことに伴い本研究科所属の教員一 人一人に対する負担が過重になりつつあります。本研究科における人員の増員と施設の整備が今ほど求められている時代はありません。我々が厳しい自己評価を 行いつつ、本研究科・学部の拡充を求める所以がここにあります。
教育学部の特色
教育学というのは、人間理解に、まさに「教育的」としかいいようのない、確固とした立場をとります。人間について、たんに「人間には○○の特徴がある」とか「○○に分類できる」といったとらえ方をとらず、常に「もっと、こうでありたい」として成長・発達しつつある、しかもそれを互いに支え合い、教え合う、という社会・文化的な協同作業を通してなしとげている存在であるととらえるのです。
この人間理解の立場に立って、本学部では、いくつかの学科・コースに一応分かれて、その追求の切り口にしているのですが、それらはあくまで「切り口」にすぎません。少しでも深く追求していきますと、それらはすべて網目のように互いに関連し合っていることがわかるはずです。したがって本学部では他コースの授業科目をかなり自由にとれるようにしてあります。
- 教育方法と内容
- 大きく分けて、講義と演習がありますが、いずれも少人数クラスのものが多く、学生の積極的な参加が期待されています。調査・実験も多く、また、実際の授業を観察したり、授業のビデオを中心にした討議も活発です。卒業論文が全ての学生に課せられます。
- 授業・講師について
- 教育学部専任の教員としては、30名の教授、13名の准教授、5名の講師、4名の助教で構成されていますが、他に約60名の非常勤講師にきていただいいております。
- 学生の進路について
- 毎年20パーセント前後の学生が大学院に進学します。学校の教員になる者も何人かはいますが、教員免許を取る必要があり、「いそがしい」ことを覚悟しなければなりません。多くの学生は官公庁や一般の企業に就職しますが、それぞれ、何らかの形で「人間を育てる」ことに関わっているケースが多いようです。
- 施設について
- 中野に教育学部付属中等教育学校があり、原色の先生方との交流も盛んです。様々な共同研究のプロジェクトがあり、新しい教材・カリキュラムの開発が進められています。